2017年8月31日木曜日

一緒に暮らしていたネコについて-その3-

前回「一緒に暮らしていたネコについて-その2-」と、
前々回「一緒に暮らしていたネコについて-その1-」に引き続いて、
飼っていたネコの病気と生活について書いている回です。
絵のことではないのでご了承ください。

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2017年10月、私が埼玉へ引っ越すと同時に
他の治療手段があるかもしれないとミサキも連れて帰ることになりました。
埼玉へ着き、早速中標津の獣医さんに書いてもらった経過報告書を持って、
昔犬を飼っていた頃ずっとお世話になっていた
地元の個人病院へつれていきました。

まず言われたのが、猫コロナウィルスの数の多さだけで、
FIPが発症したか判断は出来ないので、
とりあえずFIPの検査をしましょうとのことでした。
これもだいぶ驚きましたが、基本的に北海道だとしてもどこの病院でも
外部機関に委託しFIPの検査はできるのだそうです。

そしてさらにビックリしたことに検査の結果はなんと陰性。
今までずっとFIPだと思いこんでいたので再び拍子抜けしてしまいました。

100%の致死率の病の可能性が無くなり、ものすごい安堵感でしたが
同時に、じゃあ何にこんなにミサキは苦しんでるだろうと、
つかみどころのないだだっ広い疑問が浮かんできました。
ただの虚弱体質と言ってしまえばそれまでですが、
原因があってちゃんと治療ができれば
また元気に走り回れるようになるだろうし、
ミサがうちにきてくれたからには、生きるサポートをしてあげたい、
むしろ私たちの精神的サポーターとして元気でいてほしい、
少しでも一緒の時間を共有したいと思っていました。


人の膝の上が大好き

この頃の全体の症状としては、
食欲は多い日と少ない日があり不安定、
左後足の反応が悪く歩行が不自由、
ビビり症で、大きな物音に異様に反応したり神経過敏、
おしっこはトイレへ行けるが、ウンチは自分の意思でできない、
旋回歩行などがありました。

ただ血液検査をするも、内臓系はすべて正常値で異状なしのきれいな健康体。
左足も外的要因(折れてる、筋肉損傷など)もみられません。
考えられるのは中枢神経の損傷か、
神経系の病気である可能性が一番高いということでした。
神経の病気は検査などの原因追及が難しいため、
大きな大学病院でMRIなどの検査をする方法なども提案してもらいましたが、
とりあえず少しずつ病気の可能性をつぶしていくことになりました。

まずは目先の問題の、食の不安定さや神経系の症状をよくするために、
ステロイド剤(状態向上)、
ビタミン剤(神経のしびれなどを緩和)、
精神安定剤(神経過敏の緩和、食欲増進)を処方してもらい、
その他サプリメントはコルディ、アンチノールを試してみました。
それからメス猫の場合、避妊手術をすると食欲が増えるということがあるので
それを期待し2回目のワクチンをした後手術をしました。

治療や手術の効果なのか、だんだんと食欲も増え、
エサも半年前の3倍以上食べられるようになり、
走り回って遊ぶ時期もあったりして筋肉もつき、
体重も最高で2.8kgまで増えました。
(処方してもらっていた精神安定剤は人間で例えるとお酒のような効果があり
満腹中枢が麻痺し〆のラーメンが食べられる状態に似た感じになるそうです。
一時期は心配になるくらいドカ食いしていました…)
無事に年も越すことができ今年2017年2、3月には
すこぶる調子も良くぽっちゃりして、
近所の人には「あらぁタヌキみたいね」なんて言われたりしつつ、
夏には羅臼に一度連れて行けるかもなんていう話まで出ていました。


ぽっちゃりして貫禄がついてきた頃
左後足は相変わらず伸びてしまう

ただ、薬をあげている以上副作用は否めません。
ステロイド剤は使用すると調子が上がり元気に見えるものの、
免疫力を下げてしまいます。
すると感染しやすくなり、膀胱炎を幾度も発症していました。
そのたびに抗生剤と時には止血剤で治療するのですが、
抗生剤の副作用で食欲が落ちる…。
ステロイドを投薬している限りこのジレンマを繰り返すことになりました。

そのうちに4~5月あたりから、
少しずつですがまた状態が後退し始めていきました。
獣医さんから再びセカンドオピニオンの提案をしていただき、
埼玉の三郷市にある病院で、日本の獣医師界でも有名な神経系の病気の研究を
けん引しているという獣医さんに診てもらうことになりました。

結果として、考えられるのは3つ。
・頭部外傷か奇形(水頭症)
 小さいころ頭を打って内出血し治った後に後遺症として神経障害になった。
 特徴として旋回歩行がみられる。

・若年性変性症(アビオトロフィー)
 大脳と小脳が委縮する病気。生後5,6か月から異変が見られる。
 (珍しい病気のためネット上では専門的なことしか出てこない)

・蓄積病(ライソゾーム蓄積病)
 細胞が新しくなる時に分解されるはずのゴミを、
 うまく出せずに溜まっていってしまい細胞自体が死んでしまう病気。
 神経細胞は新たに作られることがないため、
 死んでしまうと徐々に神経障害があらわれてくる。
 生後3か月~6ヶ月で発症。

特に、若年性変性症と蓄積症は小さい時から動きがおかしくなり、
およそ2歳ぐらいで寝たきりになるということでした。

外部損傷であればMRI検査によって判断することはできるけど
下のふたつは、脊髄や脳の病気ゆえ生前に検査する方法はなく
亡くなった後に死因解剖して初めてその病気だったと分かるとのことでした。
ただ、発症時期も同じようだし5、6月に2歳になったので、
もし下のふたつの病気なのであれば
今後寝たきりも覚悟しなければと思いました。

MRI検査をするにしても、大学病院でのあれこれや
全身麻酔をしなければならなかったりと、
そこまでの体力がその時のミサキには無い状態でしたし、
そうなるともはやミサキのためというより
飼い主側が納得するかどうかという、
本末転倒なことになりそうな気がしました。
人間側の都合で連れまわしてもさらにツラい思いをさせるだけだと思い
ひとまずこの結果を受け入れ、地元の病院で今まで通りの治療に戻りました。

もちろん症例として残れば今後の医療に繋がるのかもしれませんが、
やっと頑張って生き抜いてきたミサキに
そこまで背負わせるのは考えられませんでした。
小さいころから闘病してきたミサキ。
毎朝毎晩の薬は強制的にシリンジで飲ませていました。
その度に大きな鋭いクリクリの目で見上げられると
「何でこんなに苦しいの?」
と言われてるようで、今やっていることは
この子にとって本当に幸せなんだろうかと思わざるをえませんでした。

抱っこしてシリンジで薬をのませる

5~6月にかけて少しずつ歩行が困難になっていきました。
少し歩いてはペタンと腰が落ちてしまい、床も足が滑ってうまく歩けないので
滑り止めや絨毯をしいたり工夫しましたが
トイレもだんだんと自力で行くことが難しくなったので、
おしっこは一日に4~3回促して出してあげるようにしました。

刺激になるかなと思い初めて庭に出したとき
ビビって腰がひけていた
エサも自分で食べに行っていましたが、
座って食べるのもできず寝ているような格好で食べることが多くなりました。
食欲は落ちなかったので少し安心はしていましたが、
おもちゃで遊ぼうとしても目では追って狙う仕草をするものの
飛びかかったりじゃれたりはせず、
足が動かないのであきらめてしまう感じでした。

何かして欲しいことがあると鳴いて呼ぶことも

7月に入って梅雨明け前、
暑い夏日が続き、体がだるいのか一日中寝てる日が続きました。
食べるのもホントに少し、水もあまり飲まずずっと寝ています。
たまに起きると、座って作業している私の足を前足でちょいちょいして
抱っこは相変わらずせがんできました。
体調が悪い時ほど甘えたかったのでしょう。
このままだと脱水してしまうと思い強制的にあげてみますが
拒否してなかなか飲まず食べずでした。

足をちょいちょいして抱っこを要求
(写真は2月)


その日は、朝からおしっこの色も濃い色だったので
病院に連れていくと脱水症状だということですぐ点滴を打ってもらいました。
ここからおそらく2、3日ごとに点滴が必要になると診断され、
家で経過を見ることになり帰宅しました。
大好きなスープを目の前にあげても舐めることもしません。
撫でてあげると気持ちよさそうな表情をしていたので
横で撫でたり膝に抱っこしたりしていましたが、
午後、大きなため息をする回数が多くなりました。
(後に酸欠状態だったんだろうということが分かりました)

夕方、急に容体が悪化してんかん発作が起こり
急いで父に運転してもらい病院に連れて行きましたが、
道中私の腕の中で息を引き取りました。


2歳と2カ月。
普通のネコだったら短いのかもしれませんが
とても一生懸命生きてくれました。

ようやく長くてつらい闘病生活から解放されて、
身体も軽くなって自由に駆け回ってるんだろうなと想像すると
少しホッとします。
でも、動物はきっと人と違って
どの子も最後まで生き抜くことを選ぶんだと思いました。
死んでもおかしくない状態からの起死回生劇は本当に奇跡のようでした。

最期は脱水症状からのてんかんでしたが、
ここまで蝕んだ病名や原因は最後まで分かりませんでした。
ただ、病気の経過を見る限りだと病状が進行しているように見えたので
神経系の病気である、細胞のゴミが溜まる蓄積病や
脳が萎縮する若年性変性症だったのかもしれません。

しばらくは私も心の整理がつかず、
病院に連れていくのがもう少しでも早ければ、
何か他に手だてがなかったのかと
とても後悔して、後悔しても足りないくらいでした。

でも、どんなに尽くしても結局は後悔はするだろうし、
それだったら一緒の時間を楽しいものにすることのほうが、
今までのミサキにも、今後の私たちにも必要なことだったんだと思いました。
唯一、姉に最後合わせてあげられなかった後悔は何時までも残ると思います。。

今はもう沢山のことを教えてもらって感謝しかありません。
ここまでいっこの命に向き合えたこと、
大切なものの死を経験させてくれたことも感謝です。

もし今後縁があってまた違うネコを迎える日があったとしても
ミサキ以上のネコに出合うことは
ないかもしれないなぁとぼんやり思っています。
手を焼いた子ほど愛おしくなるものです。

3回に渡って長い長いまとまりのない文にお付き合いいただき
ありがとうございました。
ここまで読んでくださった方はきっと、
大切に想う子がいたり大変な状況の方がいるのかもしれませんね。
ミサキと私たちが経験したことが、
どこかで困ってる子たちの役に少しでも立てればいいなと願っています。

飼い主さんとその子たちの幸運を祈って。


お気に入りのおもちゃはエノコログサと鳩の羽とドコモダケのストラップ

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